ひと夏のキセキ

―コン…コン…


小さくゆっくりと扉がノックされた。


ここをノックするのは病院の人か両親だけ。


こんなノックのし方をする人はいない。


…誰?


警戒しているうちに、お母さんが勝手に扉を開けた。


「ちょっ……え……?」


なんで…。


なんで遥輝がいるの…?


この場所は教えていないのに。


どうして…。


「…ごめん絢。遥輝くんにどうしてもって頼まれて、居場所教えちゃった」


お母さんが…?


私たちの関係をよく思ってなかったんじゃないの?


なんで。


神田先生に強く口止めしたから、バレることはないと思っていたのに。


お母さんからバレるとは思ってもみなかった。


「じゃあ…私は外にいるから。話し終わったら教えて」


そう言ってお母さんは部屋の外に出て行ってしまった。