ひと夏のキセキ


✡✡

結局、一睡もできないまま朝がやってきた。


今日のお昼過ぎに出発だ。


「具合は?大丈夫?」


「…うん」


体調は悪くない。


でも、これからのことが不安で不安でたまらない。


「飛行機…怖いなぁ…」


これから私はどうなるんだろう。


治る可能性があるのは嬉しいけど、治したその先になにがあるんだろう。


リスクを伴ってまで得たい未来なんてあるんだろうか。


「不安なら今からでも前の病院に戻ってもいいのよ。絢の意思次第だから」


「お母さんはどうしてほしいの?」


アメリカ行きを決めるとき、お母さんにしては珍しく自分の意見を主張してこなかった。


絢の意見に従うの一点張りで、何を考えてるのか教えてくれない。