「あたしも行っていい?絢に会いたい」


「…勝手にしろ」


「やった。じゃあ行こ。バイク後ろ乗せてよ」


ほんと図々しい奴…。


俺に喧嘩売ったこと忘れてんのかな。


「何?図々しいって思った?」


「自覚あるなら改めろよ」


「でもこれがあたしだから。あたしらく振る舞って何が悪いの?」


真顔で自己中かますなよ。


まぁでも、それがこいつの良いところか。


「…行くぞ」


頻繁に喧嘩売ってくるし、ズケズケとした物言いにはイラっとするけど、なんだかんだありがたい存在だ。 


葵がいなかったら俺と絢はとっくに終わっていた。


そもそも、出会いすらしなかった。


「葵」


早足にバイク置き場に向かう背中を呼び止める。


「ん?」


「ありがとう」


面と向かって礼を言ったのはいつぶりだろう。


初めてかもしれない。


「…キモ。あんたに礼言われるとキモいって。ほら、早く行くよ」


「……チッ」


やっぱうぜー。


でも、こいつがいると心強い。


「なぁ遥輝」


バイクに跨ったあと、背後から葵が話しかけてきた。


「何?」


「…もう後ろ向きにはなんないでさ、前向きに生きてこーよ」


わかってる。


その返事の代わりに、勢いよくエンジンをかけた。