ひと夏のキセキ

「んな簡単なことじゃねぇんだよ」


「知ってるよ。当たり前じゃん。簡単なはずないでしょ。でも、やるんだよ。てか、やれよ。意気地なしが」


俺を励ましてくれてんのか、文句を言いに来たのか、なんなんだよこいつは。


なにが意気地なしだよ。


「うるせーんだよ」


「うるさくて結構。あたしは、あんたたちがすれ違い続けてるのを見てて本当にイライラしてんの」


「知らねーよ。お前がイライラしようがしまいが俺には関係ない」


「あっそう。なら、後悔しても知らないよ?このまま絢が死んじゃったらどーすんの?あんた、後悔しないの?」


……。


後悔は、する。


このまま一度も会えないままその時が来てしまったら俺は…。


一生自分を憎み続ける。


「…後悔しない道を、ちゃんと選びなよ。ね?」


「……」


「返事は?」


「…わかったから。いい加減黙れ」


「ったく。ありがたく思えっての」


…思ってる。


こうやって本気で向き合ってくれる人がいる俺はきっと恵まれてるんだろう。