ひと夏のキセキ

「さっきも言ったけど、俺は絢のことを忘れようと思ってた。でもできなかった」


言わないで。


それ以上何も言わないでよ。
  

「どうしようもないぐらい絢のことが好き」


…わかってるよ。


遥輝がそう思ってくれてるのは、痛いほどわかってる。


だから怖いんだ。


遥輝が私を好きでいればいるほど、私を失った時に傷つく。


遥輝がこれ以上傷つくのが怖い。


「絢を失うのは怖い。できることならずっと一緒に生きていきたい。でも、失うことばかり考えるのは勿体無いなって思った。未来のことばかり考えて、今、この瞬間を生きている絢を拒絶したのは間違ってた」


……。


強い意思を感じ、ゆっくり顔を上げる。


そして目が合ったとき、力強く抱きしめてくれたんだ。


久しぶりに感じる遥輝の体温にホッとする自分がいる。