ひと夏のキセキ

「…母さんが死んでからプラネタリウムは避けてたんだ。思い出すと苦しいから」


私の隣の椅子に腰を下ろし、ボーっと前を見つめながら話す遥輝。


「幸せだった頃を思い出したくなかった」


「…うん」


「…同じ理由で、絢を拒んでた」


「…うん」


そうだよね。


もう、忘れたほうがいいんだよ。


お互いに。


「…絢のことなんか忘れたほうが自分のためになると思って、自分を守るために、他の女と遊んで無理やり忘れようとした」


「……」


「傷つけてごめん」


私の方を向いて深々と頭を下げる。


どうして遥輝が謝るの。


「それは私の台詞だよ…。私のせいで苦しいんだよね…。私のせいでツラい思いさせてごめんね…」


悪いのは私。


遥輝は悪くない。