ひと夏のキセキ

「…俺は、絢のことが好きだよ」


…やめて。


そんなこと言わないで。


“好きになりたくなかった”


これが遥輝の心の声でしょ?


好きでいてくれるのは嬉しい。


でも、それと同時に苦しみもあるのなら、好きになってほしくない。


もう忘れてほしい。


私も忘れるから。


忘れたくないけど、忘れられるように頑張るから。


「……私、もうすぐ死ぬんだよ」


「……」


「遥輝、耐えられる?」


「………」


答えられないのが答えだ。


私は遥輝を守りたい。


遥輝のことが大好きだから。


「真生から聞いたよ。毎日女遊びしてるんでしょ。それって、私のことを忘れたいってことだよね」


「………」


「それでいいと思う。私のことなんか忘れて、幸せに生きてよ」