ひと夏のキセキ

「遥輝の悪い癖だよ」


誰にも話さず一人で抱え込む。


しんどくても一人で耐えて、皆の前では何でもないような顔をする。


そんなの、いつか壊れちゃう。


だからせめて私が生きている間に、私に頼って欲しい。


頼りないかもしれないけど、話を聞くくらいならできる。


「もっと私のこと頼ってもいいんだよ…?」


無理やり目を合わせにいくと、弱々しい視線が返ってきた。


そして小さく息を吐き、窓辺に移動する。


カーテンが開き、眩い白い光が一筋差し込んでくる。


「遥輝?」


こちらに向けられた背中はどこか小さくて、胸がキュッと締め付けられる。


隣に立ってもいいのかな。


その背中に触れてもいいのかな。


わからない。


遥輝はいつも“踏み込むな”と私を制止する。


そして私は、立ち入っちゃいけない気がしていつも足がすくむ。