ひと夏のキセキ

「このチケットは葵に返すことにするね」


今は遥輝の言う通りにしていよう。


それが遥輝のためになるなら、いくらでも頑張る。


頑張らなきゃいけない。


「葵から貰ったってこと?」


「うん。葵、心配してたよ?遥輝が元気ないって」


私も心配だ。


茜さんのこと、お母さんのこと。


今でも立ち直れていないのは見ていてよく分かるから。


「今年の夏は私と一緒に過ごそう?毎日会いに来てよ。だめ??」


水族館には行けなくても、一緒に過ごすことに意味がある。


遥輝の誕生日をツラい記憶から素敵な記憶に変えたい。


「心配してくれてんの?」


「当たり前じゃん」


「心配しなくて大丈夫だから。俺は絢が生きててくれてるだけで充分幸せ」


遥輝は目も合わさずシャットアウトしようとする。


だから心配なのに…。


青涼の皆にも相談してないみたいだし、そんなに一人で抱え込んで大丈夫なのかな…。