ひと夏のキセキ

遥輝は今でも私と茜さんを重ね合わせては思い出しているんだろうか。


遥輝が苦しい思いをしているのは私のせいなんだろうか。


「生きることを諦めんなよ」


生きることを諦める…か。


私は…諦めてるのかな。


そんなつもりはなかった。


運命を受け入れて従っているだけ。


でも遥輝には諦めているように映るんだ。


「諦めてないんだけどなぁ…」


遥輝が私の手を掴む。


冷たい手。


前より少し細くなってる。


「諦めてないんなら、頼むから無理しないでくれ。治る可能性が1%でもあるんなら、その1%に賭けてくれよ。なんで、この気持ちが伝わらねぇんだよ。俺は、お前がもうすぐ死ぬだなんて思いたくない。少しでも長く生きるために、今頑張ろうって言ってんだ」


一言発するごとに手首に伝わる力が強くなっていく。


死期を受け入れてそれまでを悔いなく過ごしたい私と、死期を受け入れずこれから先の人生のことを考えている遥輝。


私たちの考えが合う日はきっと来ない。