ひと夏のキセキ

「…このまま話してても平行線だね」


私は折れるつもりないし、きっと遥輝もないんだと思う。


どうしてこうなっちゃったんだろう。


楽しかった毎日が恋しい。


あの頃に戻りたい。


「死んでほしくないから無理させたくないって言ってるけど、私はどうせ死ぬんだよ」


だから少しでも楽しいことをしてから死にたいのに。


どうしてそれが伝わらないんだろう。


「怖くねぇの?」


「うん。怖くないよ。遥輝は怖いの?」


「怖いに決まってんじゃん」


…なんで。


死ぬのは私だよ。


遥輝が死ぬわけじゃない。


なんで怖がるの。


「お前の病気、絶対に治んねぇの?」


「たぶんね」


前例がない病気だから分からないけど。


奇跡なんてそう起きやしない。


身体の機能が弱ってるんだから、近いうちに死ぬだろうね。


「自分の事なのに妙に冷めてる感じ、死ぬ前の茜にそっくりだ」