ひと夏のキセキ

「病気や病院に縛られない自由が欲しいよ」


遥輝なら叶えてくれると思ってた。


「最期くらいワガママ言わせてよ…。ワガママに付き合ってよ…」


あの約束、本当に嬉しかった。


私でも“ふつう”が手に入るかもしれないって。


翼が貰えるかもしれないって。


「お願いだよ…。遥輝…」


遥輝の手に自分の手を重ねる。


ぎゅっと握ろうとしたけど、すり抜けていってしまった。


「もう無理しないって約束できる?」


「……うん」


嘘。


できない。


だって遥輝といろんなことを経験したいから。


「嘘つかなくていーよ。お前は絶対に無理する。だから嫌なんだよ」


「…エスパーなら私の気持ち分かってよ」


「分かってるよ」


…そうだね。


わかってて受け入れてくれないんだよね。