ひと夏のキセキ

「好きなように生きてほしいって俺だって思ってる。絢の言う通り、絢の人生は絢のもんだ。けど、絢だけのもんではないだろ?」


「……」


そうかもしれないよ。


そうかもしれないけど…。


「…やっぱり私は“ふつう”の女の子になれないんだね」


死に方くらい好きに選ばせてよ。


好きな人と好きなだけ過ごしてから死にたいよ。


どうしてダメなの?


ふつうの女の子たちは好きな人と思う存分遊ぶじゃん。


どうして私はできないの?


「…かもな」


…っ。


返ってきたのは期待していたのとは違う言葉だった。


「…遥輝はどうしてそんなに私を病人にしたいの?」


どうしてふつうの女の子と同じように扱ってくれないの?


ふつうに会話して、ふつうにデートしたいのに。


早死してもいいからそうしたいのに。


遥輝はそれを許してくれない。


「私、自由になりたいよ」


悠々と大空を飛ぶ鳥のように。


翼がほしい。


翼があればどこにでも飛んでいける。


自由になれるのに。