ひと夏のキセキ

「……私、別れることがお互いのためになるってどうしても思えない」


「…うん」


初めて私の言葉に反応を示してくれた。


「遥輝はどう思ってる…?」


答えてほしい。


沈黙じゃ何も分からない。


答えになってない。


「俺は……絢を守りたい」


「…守るって何」


そもそも、私はどうせ死ぬ。


夏が終わる頃にはこの世にいないだろう。


遥輝がどう行動しようと、結局死ぬんだよ。


それなのに、守るって何?


遥輝に私は守れないよ。


だから私は少しでも長く一緒にいたいんじゃん…。


そう思うのに、言葉にはできなかった。


遥輝があまりに暗い顔をしているから。


見たこともないくらい苦しそうで、その元凶は自分なんだと思うと何も言えなかった。