ひと夏のキセキ

別れを切り出しておいて、私の気持ちは無視しておいて、ズルいと思った。


なんでこんなものを置いていくんだ、嘘つき、って。


でも、違うよね…?


「本当にこう思ってくれてるから、だからわざわざ置いていったんじゃない…?」


心の奥底からのメッセージだったんじゃないかな…。


遥輝の反応はない。


ただジッと何もない空間を見つめている。


「…ごめん。都合よく解釈しすぎだよね…。やっぱり、これ、返すよ。…ごめんね…」


何に対する“ごめんね”なのか分からない。


でも、他に言えることはもう何もない…。


どれだけ別れたくないと主張しても、遥輝が何も言ってくれなかったらどうすることもできないから。