ひと夏のキセキ

「ウジウジすんなって」


明るい声と同時に葵の手が送信ボタンに触れた。


「あっちょっと…!」


送信されてしまった…。


どうしよう…。


「なるようになるって。この前まであんなに仲のいいカップルだったんだからさ」
 

「…だといいけど…」


幸せだったあの日々が遠い昔のよう。


あの頃に戻りたい。


私はやっぱり遥輝のことが大好きだよ…。


ずっと一緒にいたいよ…。




そんな私の想いが通じてか、遥輝からの返信は意外と早かった。


【俺も】


たった2文字、相変わらず絵文字も何もない無機質な文章だけど、涙が出るほど嬉しい。


遥輝も同じことを思ってくれているんだ。


会いたいよ、遥輝…。


会いに来てほしいよ…。


【今から会いに来てくれないかな…?】


私は遥輝の家を知らないし、真夏の昼に外出するのは避けなきゃいけない。


だから私からは会いに行けない。


すべては遥輝の意志次第。


遥輝が会いに来てくれなきゃ私たちは会えない。