ひと夏のキセキ

徐々に徐々にヒートアップしていき、しまいには怒鳴りつける葵。


電話の向こうの遥輝は押し黙ったまま。


一言も発しない。


「あんた、最低だよ。結局、自分を守るために必死じゃん。絢の気持ちなんてなーんにも分かってない。分かろうともしない!絢はあんたが側にいる、ただそれだけでいいんだよ!!それがなんで分かんないかな!?」


あまりの怒号に看護師さんたちが飛んできて葵を止めるけど、葵には制止が聞こえていないようだった。


「お前が絢を守れよ!!他に誰がいんだよ!!あんたしか絢は支えらんないんだよ!!」


「葵…、もういいよ…」


「よくない!逆に絢はいいの?このまま遥輝に逃げられて、ホントに後悔しない?」


『逃げる?ふざけんな。俺がどんな思いで決断したと―』


「うるせぇな!お前は逃げたんだよ!!絢の母親から責め立てられて、重い責任感じて、それが嫌になって逃げたんだろ!!距離置けば自分のせいで絢が倒れることもないし、絢が死ぬこともない!だから距離置きたいんだろ?お前はそういう奴なんだよ、結局!」


…っ!


やっぱり、私は遥輝の重荷だ。