ひと夏のキセキ

「もしもし?あたしだけど。あんたさぁ、何考えてんの?」


『なんだよ急に』


葵はスピーカーにしているらしく、遥輝の声がはっきりと聞こえる。


「絢と別れたんだって?」


『…お前には関係ねぇだろ』


「は?あるに決まってんじゃん。絢はあたしの大切な大切な親友なの。そんな絢のこと傷つけて、ただで済むと思ってんの?なぁ」


私を守ろうとしてくれている気持ちだけでじゅうぶん嬉しいのに、そんなふうに言ってくれるなんて。


傷ついた心に優しさが染みわたり、また涙がこぼれそうになる。


「黙ってないで何か言えよ」


『お前と話すことは何もない』


「ふざけんな!こっちは大ありだっての!絢を守るために別れた?一緒にいると絢が無茶するから?だったら無茶させないようにお前が努力しろよ!絢を傷つける前に、絢と一緒に幸せになる方法を考えるのがお前の役割だろ!それが何?自分にはもう関係ない、絢と別れてそれで終わり。そういうこと?それとも、目の前で絢が倒れて怖くなった?もう誰も亡くしたくないから?でもそんなのお前のエゴだろ!お前は、絢を守りたいだのなんだの綺麗事並べて、ただ絢から逃げただけ!違う!?あたし、何か間違ったこと言ってる?」