ひと夏のキセキ

率直に怒りを露わにする葵が少し羨ましく思えた。


私はこんなふうに素直に感情表現ができなかった。


葵みたいにもっと本気で嫌だと伝えればよかったのかな。


自分の思いは伝わらないんだって諦めてしまったのがダメだったのかな。


そんなだから遥輝は私から離れていっちゃったのかな…。


「ちょっとあのクソ野郎に電話かけるわ」


「えっ!?そんなそこまでしなくても…」


「いや、あたしの気が済まない。絢を泣かせやがったことは絶対に許さない」


葵…。


私…幸せ者だな…。


私のためにここまで怒ってくれる人がいるなんて。


遥輝がいなくても、なんとか幸せに生きていけるかな…。


…ううん。


やっぱり遥輝がいなきゃ私は…。