ひと夏のキセキ

「…なんで来てくれたの?」


「さっき遥輝から連絡来てさ。“絢の目が覚めたらしいから見舞い行ってやって。会いたがってると思うから”って。彼女が倒れたってのに妙に他人事というか」


…私が落ち込んているのを分かって、葵を派遣してくれたんだ。


そういう優しさ、もういらないのに。


なんでそんなことするかな…。


「遥輝も一緒に行こうって誘ったんだけど、断られちった。アイツ結局見舞いには来た?」


「……うん」


「なんだ、来てたんだ。超心配してたっしょ。アイツ過保護だかんな〜」


能天気に笑う葵が眩しい。


私はそんなふうには笑えない。


「……なんかあった?」


声のトーンが落ち、真剣な眼差しに変わる。


「…遥輝と別れた」


“別れた”


そうは思いたくないけど、“別れた”んだよね、私たち。


喧嘩だって思いたいけど、そんな生易しいものじゃなくて、もっと冷酷で現実的な“別れ”。