ひと夏のキセキ

ペアリングごと落ちてしまえばいいのに。


「…できない」


この手は離せない。


離したいのに。


こんなプレゼント、いらないのに。


ペンダントを握る指は動かない。


「絢?何してんの?」


突如背後から聞こえてきた澄んだ声にビクッと肩が跳ね上がる。


それでもペンダントは落ちなかった。


「…葵……」


葵の顔を見た途端全身の力が抜ける。


「絢!?大丈夫!?しっかりして!」


細いけど筋肉質な腕に抱きとめられ、そのままベッドに座らせてもらえた。


「体調は?」


窓を閉め、カーテンも閉め、直射日光を遮断してくれた葵。


「ありがと…。今は平気だよ」


「そっか。ならよかった」


目を細めて頭を撫でてくれた葵のその姿が、一瞬遥輝と重なって見えた。