ひと夏のキセキ

「…嘘つき」


“いつもそばにいる”
“この手を離さないで”


「こんなもの…いらないよ…」


嘘が刻み込まれたペンダントなんていらない…。


なにが“いつもそばにいる”よ…。


なにが“手を離すな”よ…。


そばにいてと強く願ったのに、その手を離したのは遥輝本人じゃない…。


ペンダントを強く握りしめ、涙が零れそうになるのを我慢する。


遥輝はいったいどんなつもりでこのプレゼントを置いていったの…?


そばにいるつもりがないのに、手を握るつもりがないのに、なのにどうして?


どうして私を苦しめるの…っ。


こんなの置いていかれたら苦しいだけだ…っ。


窓を開け、ペンダントを外に突き出す。


この手を離してしまえば、ペンダントは消えてなくなる。


地面に落ちて、粉々になって、想い出とともに散る。


それでいい。


それでいいんだ。


「……っ」


指が震える。


ペアリングが陽の光を反射してキラリと輝く。