ひと夏のキセキ

「……何の話か分かんないなぁ」


余命2か月を切ったなんて言えるわけがない。


お願いだから何も聞かないで。


「………なんでもない。俺の勘違いかも」


…優しいね、遥輝は。


わざと聞かないでいてくれたんだ。


でも…バレちゃったかな。


来年私たちは一緒にいないこと、分かっちゃったよね…。


「…気が向いたら話して。俺はいつでも聞ける準備はしてるから」


…やっぱり。


察しがいい遥輝が気づかないわけない。


「……ごめんね」


こんなふうにポロッと伝えることになるなんて。


1番酷い伝え方だよね…。


「バーカ。なんでお前が謝るんだよ」


重い空気に合わない明るい声。 


無理させちゃってる。


遥輝は、大切な人を失うのが怖いって言ってたのに。


「…ごめん…」