それは、暑い暑い夏の日だった。


私が彼と出逢ったのは。


そして、出逢わなければ良かったと後悔したのは。


窓を閉めていてもセミの輪唱が聞こえ、真っ青な空にモクモクと浮かぶ入道雲がクックリ見える日だった。





「あっちーーー」


数分散歩に出ただけの葵が汗だくで戻ってきた。 


「こんな暑そうなのによく外に出れるね…」


窓の外には緑生い茂る中庭が見渡せる。


真夏の中庭には誰もいない。


それが暑さを物語っている。


「絢は外出ないの?たまには出てみると気持ちいいよ」


一昨日、真生が置き忘れていったハンドファンを全力稼働させながら葵が言う。


「体調が良ければ出たいな」


ずっと病院にいるのはやっぱり退屈だ。


外に出たい。


大空を飛び回る鳥のように自由に…。