意外だったのは天音で、一口は小さいながらもまったくペースを落とさずに食べ続けている。
「天音、甘いの好きなんだね」
「うん! 甘いのならいくらでも入る!」
 そんな天音とは反対に、赤沢君は五口くらい食べてから静観している。
 秦野君がそんな赤沢君を呆れた様子でじとっと見つめて、ため息を吐いた。
「お前……、全然戦力になってねぇじゃん」
「コーヒーゼリーのゾーンに来たら本気出すって。だからほら、早く頑張れ」
「なんで上からだよ……」
 二人の会話に、天音と一緒に思わず吹きだす。
 性格は真反対の二人だけど、意外と相性はいいのかもしれない。
 この四人で修学旅行に行けることを、素直に楽しみに思えてきた。
 そういえば、こんな風に本当に笑いたくて笑ったのは、すごく久々かもしれない。
 祥子たちと一緒にいるときは、天音への当たりが強くて冷や冷やすることが多いから。
 天音も隣ですごく楽しそうにしてくれているので、心底安心した。
『一緒に駅前にある“ボムの実”のビッグパフェ食べに行こうよ』
 いつかの、夢花の明るい声が聞こえてくる。
 このメンバーの中にもし夢花が一緒にいられたら、どんなによかっただろう。
 気持ちが沈みそうになったので、私は慌てて一番甘そうな部分を口に運んだ。
 正直、味はかなり大味で、特別美味しいというわけじゃない。
 だけど、友人たちとくだらないことで笑いながら食べると、不思議と印象深い味になってくる。
 夢花はそれを一緒に、体感してみたかったのかな。
「美味しいね」
 しみじみとした気持ちでそうつぶやくと、天音が「そうだね」と微笑みかけてくれた。
 結局私たちは三分の一ほどの量を残してしまったけれど、秦野君の提案に乗ってよかったと、心からそう思えたのだった。