黒目がすごく綺麗で、小さな星がいくつも入っているんじゃないかってほど、煌めいている。
 父親も愛おしそうに愛娘を見つめ、必死にあやしている。
「名前、そういえばもう決めたの?」
 そう問いかけると、母親は「そうなの!」と言って手をパチンと叩いてから、こほんと咳ばらいをひとつした。
「名前は、〝巡(めぐり)〟に決まりましたー!」
「巡……!」
 聞いた瞬間、とてもいい名前だと思った。
 らせん状の長い紐が頭の中にパッと浮かんできて、色んな人の間を通っていくような、そんな映像が流れた。
「色んな人との巡り合わせを、大切にできる子になりますようにって意味を込めたんだ」
 お父さんが、そっとお母さんのあとに名前の由来を説明してくれた。
 説明を聞いて、さらにしっくりと来た。やっぱりすごくいい名前だ。
「巡ちゃーん、すごく可愛いお名前つけてもらいまちたねー」
 巡の頬を撫でながら赤ちゃん言葉で話しかけると、巡はばっと腕をあげてはしゃいだような仕草をした。
 可愛すぎてずっと見ていられる。本気でそう思った。
 巡のことを抱っこさせてもらいながら、よしよしとあやしていると、母親が突然私と巡ごと抱きしめてきた。
「わっ、何急に……?」
 驚いた声を出しても、母親は抱きしめる力を緩めない。
「よかった。この景色を見られて……」
「お母さん……?」
「粋。私の娘として生まれてきてくれて、ありがとう……」
 泣きながらそんなことを急に言ってくるもんだから、私も不意打ちで泣きそうになってしまった。
 「泣き上戸すぎだよ」と言って背中をポンポンと撫でると、そのうしろでお父さんが号泣していたのでもっと困った。
 白石粋の人生は……、私が想像した以上に、幸せだったな。
 そんなことをじっくり噛みしめながら、私は母親の体温に甘えることにした。
「こちらこそ、私の家族になってくれて、ありがとう」

 そして。
 可愛い妹の誕生で、改めて命の尊さを感じた春目前のこと。
 私は懸命な闘病生活の末……、十七歳で現世に別れを告げた。