大きな橋の上で、目が覚めるようなブルーのマフラーをつけたひとりの女子高生と目が合うと、なぜか彼女は一粒の涙を流した。
 今まで泣いていたのではなく、たしかに自分と目が合った瞬間、弾かれるように涙を流したのだ。
 それは、世界の時が止まったような、一瞬の出来事だった。
 呼吸の音さえ聞こえてきそうなほど感覚が研ぎ澄まされた数秒間。
 その人は、すぐに人混みに紛れて、どこかに消えてしまった。

”もう二度と会えない”。

全く知らない人なのに、なぜかそんなことを、強く強く思った。