――この生活が一生続いてもいい。
 私個人としてはそう考えいてた。今はメアリが一緒にいてくれるが、メアリにもメアリ自身の人生がある。
 いつまでもメアリを私の側に縛り付けておくわけにはいかない。
 思えば、私が聖女の家系に生まれてしまったばかりに、いや、人を幸せにするはずの聖女というものが、私の、父の、メアリの人生を狂わせた。
 考えようによっては、母もそうだ。聖女の権力の強大さに溺れた。カタリナも、母が変な気を起こさなければ、地方で平凡だけど幸せな一生を終えていたかもしれない。
 ついこの間まで、私は聖女になることに何の疑問を持っていなかったが、今は聖女の存在に疑問を持っている。
 幸いなことに、私一人だけであったら、どうにか暮らしてゆけそうな目途がつきつつある
 それに、この土地には、死産だった私の子どもの亡骸も眠っている。
 メアリが帰ってきたら、さっそく相談してみよう


「ただいま戻りました」
 町へ買い出しに出かけていたメアリが帰って来た。 
「おかえりなさい。町はどんな様子だった?」
「それが……大変なことになっていました」
「大変なこと……?」
「ええ、病が流行っているそうです」