「マリア様! 何をなさっているのです!」
 突然部屋に飛び込んできたメアリに、私は手をはたかれた。
「!」
 手をはたかれた衝撃で、床に薬がぶちまけられた。
「様子がおかしいと思い、後をつけて来てみれば……どうされたのです?」
 私は声を上げて泣き始めた。

 
「だからお腹の子を始末しようと……」
 私が一通り話終わる頃には、メアリも一緒になって涙を流していた。
「わかったでしょう? 私にはその薬が必要なの……」
「いけません!」
 メアリは私の懇願をはねのけた。
「マリア様は将来聖女になる身。そのような方が人を殺めるなんてことをしては絶対にいけません!」
「言ったでしょう? 私にはもう聖女になる資格はないの。それに、私は母に追い出されてしまったのよ。それなのに、どうやって聖女になるって言うの……」
 私は再び泣き始めた。
「いつという確証はありません。マリア様が必要とされる時が必ず来ます。その時を待つのです。マリア様よりも聖女にふさわしい人間などいないのですから」
「メアリ……」
「隣国へ向かいましょう。そこでその時を待ちましょう」