「……私は側仕えではなかったから、直接お話したことはないの」
「へー、そうなんだ」
 期待していた答えが得られず、ロザリーは不服そうだ。
「聖女様に興味があるの?」
 墓穴を掘ることになるかも知れないが、私には聞かずにはいられなかった。
「興味ってほどじゃないんだけど、聖女様って、あたしらの役に立ってくれるような人なのかなって」
「役に立つ?」
 聖女に対して〈役に立つ〉とは随分な言い草だ。
「聖女様は私たちのために祈って下さっているわ」
「ぷっ……あははははは!」
 私が反論すると、ロザリーは吹き出した。
「ごめん、ごめん。あんたが聖女様を庇いたくなるのもわかるけどさ。聖女様が祈ってくれていても、あたしらの生活は一向に良くなってないじゃないか」
「……」
 痛いところを突かれた。私も追放されてから初めて、国民の生活水準があんなにも低いということを知った。
「それでもさ、先代の聖女様はまだご立派な方だったらしいよ。孤児院に寄付したり、国民みんなが教育を受けられるようにって、誰でも通える学校を作ろうとしていたみたいだから」
「知っているわ……」
 先代の聖女――私の祖母は、聖女のお手本のような人であり、私の目標でもあった。
 残念なことに、祖母は志半ばで亡くなってしまったが。