視線が一斉に私の方に向けられた。
「マリア! 一体、どういうことなの、こんなに遅刻をするなんて!」
 私が部屋に入るなり、母は私を激しく叱責した。
「あの……私は言われた通りの時間に来ただけですが……」
「言い訳をするなんて、次期聖女としてあるまじき行為ね!」
 母は信じられないといった表情をわざと作った――ように私には見えた。
 だが、次の瞬間、一気に顔をほころばせ、
「まあ、いいでしょう。あなたの代わりに、カタリナががんばってくれたわ。今日のところはカタリナに免じて大目に見てあげます。わかったら席に着きなさい」
「申し訳ございません……」
 私は案内された席に着いた。
 そこは、母の隣の席ではなく、一番身分の低い者が座る席であった。


 今日のお茶会は、いつも以上に辛かった、いや、屈辱的だった。
 母は終始、カタリナがどんなに素晴らしい娘であるかを語っていた。
 これで、母が、私とカタリナのどちらを重視しているかを、はっきりと示したことになる。
 私がお茶会に呼ばれなくなる日も、そんなに遠い未来ではない。そして、私がいないお茶会では、ご夫人方が、私のことをさぞ面白おかしく話題にしてくれることだろう。
 お茶会からの帰り道、私は離れの方角から歩いてくる人影を見た――それは、メアリであった。