前途多難。困ってしまった。
 私はもしかして……子育て要員として召喚されたのかしら?

 せっかく人生をかけて嫁ぐのだから、旦那様と仲良くやっていけたらいいなと思っていた。私には血がつながった家族はいても、心までつながった家族はお母様しかいないから。
 ネリーの話を聞いていると、それは夢のような話かもしれない。でも、私にとって一番大切なのはお母様なのだから。妻として愛されなくても、いざとなれば使用人の皆様と一緒に働いてもいいし、むしろそちらの方が気が楽だ。

 妻という立場はあやふやなもの。人の気持ちなんていつどんなきっかけで変わるか分からないのだから。

 もし他にもお子様が既にいらっしゃるようなら、私に子を望む必要もないでしょうし。先方から離縁されればまた私はお母様の元に戻るだけだ。お父様からどんな仕打ちを受けるかは分からないけれど。

 そんなことを考えているうちに、私とネリーを乗せた馬車はロンベルク辺境伯領に到着した。