「……ユーリ!」

 俺の後ろから、カレンが馬で追いかけてくる。

「待って! 急ぎ過ぎよ。全員付いて来れていないわ」
「ごめん、ちょっと気が急いていたかも。ペースに気を付けるよ」
「そうね。魔獣が現れてから二週間は経ってる。この場で魔獣が突然飛び出してきたっておかしくない状況なのよ。気を付けて」

 カレンは、俺の馬の後ろにピッタリとついてくる。少し進むペースを下げたので、カレンの後方に騎士団たちの影も見え始めた。

「ねえ、リゼットさんに、本当のことを話したんでしょ?」
「……全部話した。リカルドの失踪のことも、俺が本当はただの身代わりだったことも」
「リゼットさんも分かってると思うわ」
「何を?」
「このままユーリと関わっていたら、どんどんユーリのことを追い詰めてしまうって。ユーリの罪悪感を増幅させてしまうって」
「……カレン、ちょっとお前いい加減にしろよ。誰が追い詰められるって?」


 どうしてカレンは急に気が変わってしまったんだろう。

 確かに昔……もう五年以上も前の話だが、俺の方がカレンのことが好きだった時期もあった。騎士学校の同期として毎日顔を合わせていたし、あの頃はリカルドの尻拭いを二人で必死にやっていたから、勝手にカレンのことを同士のように思っていた。

 でもその時、カレンは俺ではなくリカルドを選んだ。

 もちろんその時はショックを受けた。でも同時に納得もした。そうだよな、俺とリカルドの二人が目の前にいたら誰だってリカルドを選ぶよ。そう思って俺は身を引いた。

 五年前の俺にとって、カレンは恋愛の相手というよりも『戦友』だったんだと最近気付いた。目の前に、俺と同じようにリカルドから迷惑を被っている幼馴染がいるのを放っておけなかった。戦友として。