翌朝のこと。

 目を覚ますと、横になったままなのに頭がガンガンと痛む。風邪をひいてしまったようだった。このロンベルクの地に慣れてきて、少し油断をしてしまったかしらと、朝から反省してしまった。

 ネリーを呼んでいつも通り着替えをしようと思ったのに、どうしても立ち上がれない。

「奥様、今日は横になってらっしゃったらどうですか? いつもこっそり屋敷中を掃除して働いてるからですよ。ゆっくりしてください」
「ネリー、屋敷の中をお掃除していたことは旦那様に言わないでね。こっそりやってたことだから」
「分かりました。朝食は部屋に運んでいただくように言いますのでお待ちくださいね」

 ネリーが部屋から出て行った。
 パタンと閉まった扉の音が、頭に響く。

(風邪なんてほとんどひいたことがないのに……)

 使用人室に移ってからというもの、冬も隙間風がビュービューと入ってくる部屋で生活していたのだ。そんな部屋でも風邪をひかないくらい健康だったはずなのにと不思議に思った。

 頭痛は徐々にひどくなり、吐き気もしてくる。
 寒気に襲われ、徐々に呼吸も苦しくなってきた。