「リゼット、誤解を与えるようなことを言ってすまなかった。あの夜に言った言葉で、君を傷つけたと思う。詳しくは言えないが、でも決して君が悪いわけではない。どちらかと言うと俺の都合だ。だから、傷つかないで欲しい……こんなことを言える立場じゃないのは分かっているが」

「旦那様……こちらこそしつこく聞いてしまい申し訳ありません。私に言えないご事情があるのは分かりました。そうだ、せっかくの夕食ですから何か楽しいお話をしましょう! 私、アルヴィラを食べてみようかと思うのですが」

「い……いきなり? 君が?! ちょっと待て、今日は俺が試しに食べよう。俺が食べて明日まで何ともなければ、次は君が明日の夕食に食べてみればいい」

「……旦那様、もしかして明日も夕食をご一緒してもよいのですか?」


 私の言葉に驚いた旦那様が、目をまんまるにしてこちらを見た。自分で明日の夕食の話をしたんじゃないですか。何を今さら驚いているのですか。


「……君さえよければ、明日も夕食を共にしよう」
「ありがとうございます。さあ、旦那様。アルヴィラを召し上がって下さい。私ちゃんと見てますから」

 旦那様はアルヴィラの花を手に取り、花びらを一枚ちぎった。しばらくそれを見つめたあと、私の顔を見ながら恐る恐るアルヴィラを口に入れる。


「……いかがですか?」
「うん……味は、ない」


 怪訝な顔をしてモグモグしている旦那様を見て、私はお腹が痛くなるほど笑ってしまった。

 翌朝、旦那様に異変が起こってしまうことも知らずに。