私たちは馬の横に並んで、騎士団の訓練場の方に向かって歩き始めた。

 ……はずだった。


「旦那様」
「……なんだ」
「もし違ったら大変失礼なんですが、道に迷ってませんか?」
「……」

 やっぱりそうだ。
 先程から同じところを行ったり来たり、変な道に入ったと思ったら引き返す。
 私もよく道に迷うからよく分かる。

 旦那様、迷子ですね?
 自分の家なのに?


「あ、いたいた! こっちよー!」
 向こうのほうから女性の声が聞こえた。振り返ると、昨日お会いしたばかりのカレン様と、もう一人男性騎士が手を振っている。

 迷子だった私たちは、カレン様の案内で無事に出発することができた。先導するのは男性騎士のハンス様。続いて旦那様と私、最後尾はカレン様だ。
 旦那様とは今までにないほど近く、馬が歩くのに合わせて私の背中と旦那様の胸や腕が時折触れる。その度に旦那様はビクッとして体を離す。

 よっぽど私のことが嫌いみたいだ。