ウォルターも、浮気相手さんのお相手を、まさか本妻に頼むわけにもいかないものね。それにしても、あれだけ美しくて強くて凛とした女性までもが惑わされてしまうとは……私はとんでもない方と結婚してしまったのかもしれない。

 でも、ダメだと言われればやってしまいたいのが人の性。私はカレン様の待つサロンへと突撃することにした。

「お待たせしております。今、執事に旦那様を呼びに行かせておりますので、少々お待ちくださいませ」

 自分に残っている最大限の品性をフル活用して、上品に挨拶をする。

 カレン様は私の髪を見て目を丸くした。先ほどは髪を隠していたから気付かなかったのだろう。この珍しい菫色の髪に。

「えっ……もしかして、メイドさんじゃなくてリカルドの奥様だったの?! 結婚するらしいとは聞いていたけど……まさかお相手が貴女だったなんて……。それは大変失礼しました。申し訳ありません」
「いいえ、気になさらないでください。私も嫁いだばかりで勝手が分からず、屋敷の中を連れまわして申し訳ございません」

 先ほどは隠していた私の菫色の髪を見て驚いているカレン様。そうよね、珍しい色よね。
 さあ、旦那様のいないこのチャンス。
 生かさでおくべきか。

 幼馴染で旦那様の過去を良く知る方だもの。厨房でこっそり食事をとったり、毎朝スミレを摘んだり、私のことを愛するつもりがないと言ったり、本当によく分からない人なの。

 カレン様から、旦那様の情報を引き出してやるわ!