今日は思い切って、正面入り口を入ったロビーの掃除をしようと思っている。お客様をお迎えする、一番大切な場所だもの。どうせ使用人たちも誰もいないから、お屋敷の正面扉を開けたって咎める人もいない。思いっきり扉を開けて、空気の入れ替えをしよう!


「こんにちは……誰かいますか?」

 (んっ?)

「あ、メイドさん! ごめんね、扉が開いてたから勝手に入っちゃったんだけど……なんでこんなに人がいないの? もしかして、リカルドって留守?」

 空気の入れ替えのために開いた正面扉から、一人の女性が入ってきた。
 少し赤みがかった茶色の髪は頭の後ろで高く一つにまとめられ、シンプルなドレスを着ている。背が高くてスラっとした体に黒いショートブーツがよくお似合いだ。

「リカルド様は、多分お屋敷内にはいらっしゃるとは思うのですが、どこにいらっしゃるかは分からなくて……」
「ああ、そうなの? アイツまたフラフラしてんのね。私、王都からここロンベルクに配属替えになったの。それでリカルドに挨拶しようと思って。あ、アイツは騎士学校の同期なんだけどね」

 そう言って肩にかかった髪を後ろに払ったその人は、とても凛々しくてきれいだ。

 ……もしかしてこの方も、旦那様に食われちゃったりしたのかしら。