(……もしかして、毎朝スミレを摘んで贈って下さってるのは、旦那様なの?)


 結婚式の翌朝から、毎朝私の部屋の鏡の横にスミレが飾られている。使用人が私の部屋まで持ってきて、ネリーに渡して逃げるというのが毎朝のルーティーンのようだけど、あのスミレは旦那様がプレゼントしてくれたものなのだろうか?

 女好きだと悪評高い旦那様のことだから、恋人さんたちみんなにプレゼントしているとも考えられるけど、それならもっとたくさん摘むはずだ。でも、彼の手に握られていたのは、私の部屋にいつも飾られているのと同じくらいの小さな花束だった。


「私の事は愛するつもりがないと仰ったのに……」


 まだひんやりした空気が漂う早朝の廊下で、私の心の中だけがほんのり温かくなったような気がした。