積もったばかりの雪のような純白の花嫁衣裳に包まれ、頭にベールと花を。

 短期間であれよあれよという間に決まったしまった結婚が、ここへきて急に現実味を増してきた。

 教会に入ると、中はこじんまりとしていて人もほとんどいない。結婚式は私たち二人と神父様、そして数人の騎士たちのみで行うらしい。きっと騎士さんたちは、この辺境を守るために配備されたロンベルク騎士団の皆様だろう。
 不思議なことに、リカルド様の家族と思しき方は参列していない。まあ、うちもだけど。

 もしかしたらあちらは、結婚することを大っぴらに示したくないのかもしれない。だって、大々的に結婚式を挙げてしまったら、浮気しづらくなるはずだから。
 彼のことは見たこともないし全く知らないけれど、私がもしリカルド様の立場ならそう考えるかな、と思った。

 あと、どうでもいいけど教会の中が寒い……!
 使用人部屋の隙間風に慣れているはずの私ですら、やっぱり寒い!

 人が出入りする時に扉を開け閉めするが、直接外につながっているから冬の冷たい空気が入って来る。こんな寒い日に、どうして私の花嫁衣裳は袖がなく、背中も広く開いたデザインなのだろうか。くしゃみをしたら、せっかくのお化粧が落ちてしまうかも。



 私がそんなどうでもいいことばかり考えているのには理由がある。


 ……旦那様になるリカルド・シャゼル様が、教会になかなか現れないからだ!