「ねね、しー君、僕さぁ、不妊手術受けようかと思うんだよねぇ」
お金が高いけど、子供が欲しく無い僕からしたら好都合な手術だった。避妊に失敗しても安心で99.5%避妊できるとネットに書いてあった。
「でも、ちぃの体に傷がつくんだよ?」
リスクを考えて開腹手術を望んでいた僕に彼は不機嫌そうにそう言った。電話越しでも明らかに怒っているのは分かった。
「しー君怒ってる」
分かってて聞いてみた。
「怒ってるよ」
結局、不妊手術はお金が無いからと保留になった。お金を貯めていつか受けよう、なんて思っていた。だが、その考えも見事に打ち砕かれる事になるとはこの時知らなかったし、これが僕が娘をしるきっかけになるとは思っても見なかった。