私たちが出会ったのは、学童保育なんです。
はい、あの頃は学童保育のボランティアをしていたんです。…そこで、その…ちょっとした事件に巻き込まれてしまって。
凌…さんは、そこで私を助けてくれたんです。そこから仲良くなって、付き合うようになったんです。
……もっと詳しく、ですか。
それはできません。人に迷惑がかかることですので。
他言はしないと言われても困ります。
ですから、知り合った時に、厄介ごとを引き寄せる体質に興味を持たれたんです。小説のネタになりそうだって。…そこはご存じなんですか。凌がこの間巻き込まれた事件も知ってる…じゃあストーカーや詐欺も…そうですか、数えるのが嫌になるほど…。
…ええ、両親も兄もよく事件に巻き込まれて…そりゃあ自分から首を突っ込んだりもしますよ。ですがその、不可抗力と言いますか、凌にも言われましたが、“義憤にかられやすい”タイプなんです。
そうですね、弁護士とか代行業ならまだしも、どうしてウエディングプランナーが事件に関わってしまうのかは謎ですよね。
それこそ、気をつけていてもどうにもできないんですよ。
わかります? 花嫁が映画の「卒⚪︎」さながら誘拐されたり、新郎が当日に浮気相手と駆け落ちしたり、招待客が酔っ払って…その、あれです。色々とやらかしたり。
こんなのどう予想しろっていうんですか。
お陰で父が担当した結婚式は必ず荒れるって言われて…トラブルプランナーとか呼ばれてるんですよ。父のせいじゃないのに!
……失礼しました、大声出したりして。
それで、その…母は…そうですね。逆恨みされて襲われたりしたこともあります。しょっちゅうではないんですが。…ええ、半グレとかヤクザとかに手を出されそうになったこともあります。
はい。私や兄を人質にしようとした人もいます。私たちを酷い目に遭わせて報復してやろうとか…いました。そういう人。
でも勘違いの場合も結構あったんです。背格好が似てるとか、騙されたりとかで…え? 協力しましたけど…どうしてそんなことを聞くんですか?
いやそれは…相手が悪びれないタイプとかだったら手を貸したりしませんよ。でもちゃんと謝ってくれる人だったら一緒に解決しますよ。
……家族や友人のせいで矛先を向けられるのと、全く関係ないのに事件に巻き込まれるのとではどちらが多いか、ですか。
数えたこともありません。…体感としては、後者の方が多い気がします…。

(凌と会う切っ掛けになった、あの事件だって…)