私がそんなことで悩んでいるとは知らないであろう二見先輩が、私の教室にやってきた。


恵里菜(えりな)ー、帰ろう」


今日は舞美達がデートで、二見先輩と一緒に帰る約束をしていた日だった。


「忘れ物無い?」

「ありません」

「よーし」


そう言いながら先輩が私の頭にぽんっと手を置いた。

これが困る。
先輩には意味の無い行為でも、私をときめかせるには十分だ。

手が少し触れるだけで胸が騒がしくなる。


「じゃあ、行こうか」


先輩に軽く腕を引っ張られ、教室を出た。