本当はもっと話していたいし、外は寒いし、『泊まらせてもらえないかな』と勇気を出して言えればいいのだが、まだそこまでの勇気はない。むしろ友達だったときのほうが言えたかもしれないが、付き合ってまだ一か月、妙な意味にとられたらどうしよう、と逆に言い出しづらい。

「あらもうこんな時間? 泊まっていきなさいよ。遅いし寒いんだから」

 林太郎のほうにさらっと言われてしまった。

「ええ? でも林ちゃん明日仕事でしょ? あたしがいたらゆっくりできないでしょ?」

 林太郎はメンズ服の販売店で店長をやっていたはずで、今日休みだったということは明日出勤ではないだろうか。土日はかき入れどきだろうし。

「人のことはいいのよ。自分の心配をしなさいよ」

 そうして、林太郎はローテーブルの向かいで、表情をあらためた。

「来たとき電話しててごめんなさいね。何か言いたいことあったんでしょ? 結が自分から言うの待ってたんだけど……泣きそうだったし」

 心臓が、跳ねた。驚きと、気恥ずかしさと、どうしてそうやって気付いてくれるんだろうという切なさで、胸が締めつけられる。

「電話、誰だったか聞いてもいい?」