そうして、とても柔らかく、照れくさそうに微笑まれた。

「よくできました。いい子……可愛い」

 頬の手を解かれて、抱きしめられた。甘い林太郎の香りがして、頬ごと体まで燃えるように熱くなった。

「照れてる結も可愛いけど、ちゃんとこれからは名前で呼びなさいよね。恋人同士って感じで、呼ばれるとどきどきするわ」

 とても弾んだ声で言われるものだから、結のほうが叫び出しそうになった。

(可愛い! 林ちゃんのほうが可愛いよ! やっぱり恥ずかしいから林ちゃんって言っちゃうけど)

 正直、生身の人間はもういいやと思っていた。生身の男性は雑だし、ごついし、くさいし。でも今、抱きしめてくれている恋人は、結よりはるかに女子力が高いし、気遣いが細やかだし、いい匂いがする。

「り、林ちゃんのほうが可愛いよ!」

「あらありがとう。いい子ね……ってまた林太郎って言ってない。言うまで離さないわよ」

「痛、痛い林ちゃん!」

 思いきり抱きしめられた。おかしくなって、胸が締めつけられて、『ああ、好きだなあ』と心が温かくなった。