(というかどっちも林ちゃんに有利な条件じゃん!)

『いやでもキスは林太郎にとって得なのだろうか?』とよく分からなくなったところで、我に返る。

 とりあえず、呼ばなければ両頬を包んでいる手を解いてもらえそうにない。

「り、りりり……りん、りんりんりん」

「吹き出さないようにこらえるのに必死よ」

「だって!」

 口元を震わせている林太郎の胸を思わず叩く。

 恥ずかしいに決まっている。『林ちゃん』はずっと『林ちゃん』だったのだから。

「り、り、りん」

「聞こえなーい。もっと大声で。はっきり」

 意地悪だ。

 別に、呼び方ひとつで関係性が変わるとか、彼氏彼女が確立するとかではないけれど。

 恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。

「り、りん、りん……りん、たろう」

 見つめていられなくて、目をそらしてしまう。頬が燃えるように熱い。きっと林太郎の手の平にも伝わってしまっている。言ったのだから早く離してくれないかと恐る恐るうかがう。

 驚いたように目を開いた林太郎と目が合って、吹き出された。

「何で笑うの!」

「違うわよ」