「えっと、今日、会社ですごい怒られちゃって。結果的に間違えたのはあたしだから、もちろんあたしが悪いんだけど、指示がものすごく遠くて聞こえなかったり、怒るのももう少し柔らかく怒ってくれればなあって思って。ものすごく凹んじゃったから、聞いてほしかったんだ」

 たいしたことじゃなくてごめんね。そう笑おうとしたら、林太郎が立ち上がって、結の隣へ座った。風が動いて、抱きしめられた。甘い匂いがいっぱいに広がる。

「いい子ね。よく頑張ったわ。偉い偉い」

 そうして、頭を撫でてくれる。

 結が悪かったら、林太郎はちゃんと叱ってくれる。そういう人だ。けれど今は結もちゃんと分かっているから、ちゃんと受け止めてくれるのだ。

 今一番ほしい言葉と、温もりを添えて。

「泣いてるの? 泣くのはストレス発散にいいから、たくさん泣きなさい。化粧崩れも心配しなくていいわよ」

「な、泣いて、ないよ!」