そうか……。


俺は安心やら喜びやら、様々な感情で胸がいっぱいになり、小さく息を吐いた。


それにしても……感謝の気持ち?


あんなやつに、感謝する必要なんて一切ない。むしろ、恨むのが当然だ。


妹の言葉だけを鵜呑みにし、鈴蘭を深く傷つけた。


そのくせ……さっきあいつは鈴蘭のことを引き止めようとしていた。


あの顔は完全に、後悔している表情だった。


あいつはきっと……今からでも鈴蘭を俺から奪おうと企んでいるに違いない。


それに、俺が勘違いしていたように、あいつもまだ鈴蘭が自分に気があると思っているだろう。


「妹の婚約者になった方なので、必死に忘れる努力をしたんです」