他人にどれだけ大切にされても……恩を仇で返す人間も山ほどいる。


改めて、そんな人間たちからこいつが離れることができてよかったと思った。


せっせとノートをまとめている鈴蘭を見ながら、俺は完全に気が緩んでいた。


『おい』


……あ?


『今すぐ体育館倉庫に来い。来なかったら、双葉鈴蘭がどうなっても知らないぞ』


突然俺の頭の中に語りかけてきた声。


くそ……誰の声だ。


普通なら相手にしないけど、鈴蘭の名前を出されたら無視もできない。


夜明さん、ラフに見張らせてるって言ってたし……もう授業も始まるから、比較的教室内は安全だ。