ノックをしてから、扉を開けて中に入った。


祖父は元から表情が固い人だ。


笑った顔なんて一度も見たことはなく、いつも小難しそうに眉間にシワを寄せて、周りの人間を萎縮させていた。


だが……今日の祖父は、一段と不機嫌だった。


祖父に怯えて生きてきた俺は、ひと目でそれがわかった。


「……お久し、ぶりです」


情けないが、声が震えている。


「なぜ呼ばれたか、わかるな?」


「……はい」


返事をした俺を睨みながら、祖父は口角の下がった口を開く。


「黒闇神の婚約者に生まれ変わりの可能性はないのかと聞いた時、お前はなんと言った?」


「ない、と……断言いたしました」


「そうだ」